2006年「ひふの日」記念 皮膚科医と考える 赤ちゃんからの皮膚ケア

シンポジウムレポート インデックス
はじめに 〜 日本臨床皮膚科医会からのご挨拶 〜

各先生の講演内容のご紹介

子どものスキンケアについて、先生方とのQ&A

バリア機能のメカニズムを正しく理解しましょう
「子どもの皮膚の病気とアレルギー」
慶應義塾大学医学部皮膚科教授 天谷雅行先生
天谷雅行先生Photo 皮膚は、体重の約16%を占めており、人間にとって最大の臓器であると言うことができます。しかしこの最大の臓器についてはまだたくさんの研究課題があることをご存知でしょうか。肌を守る基本的なメカニズム『バリア機能』もそのひとつです。
バリア機能についてまだわかっていない点も多く、乾燥性敏感肌やアトピー性皮膚炎の対処についても重要なキーワードとして注目されています。
皮膚のバリア機能は、「外側の角質層によるバリア」と「内側からの体液漏出を防ぐバリア」の2つに大別されます。
子どもや私たち大人の肌が乾燥したり、敏感になったりするのは、このバリア機能の低下が大きな原因です。
バリア機能の低下を防ぐためにも、保湿効果のある製品を使った毎日のスキンケアがとても大切です。バリア機能の低下は、皮膚が乾燥するばかりではなく、アレルギーの原因となる抗原体なども侵入しやすくなります。だから、バリア機能を正常に保つことが大切なのです。
また最近の研究で、アトピー性皮膚炎の患者さんの一部に、角層の重要な成分である、フィラグリン遺伝子に変異があることがわかってきました。
変異により、角層のバリアが機能しないと、様々な外的抗原が皮膚の中に入り込みやすくなります。すると体の免疫システムはそれを排除しようとし、その結果炎症が起こってしまうのです。

もともと、アトピー性皮膚炎の方は、バリア機能そのものに異常がある場合が多く、皮膚症状を悪くしないためにも、ステロイド剤で炎症を抑えた後には、保湿剤でバリア機能を正常に戻すことが重要です。

天谷雅行先生Photo 赤ちゃんのときにアトピー性皮膚炎にかかり、大きくなるにつれアレルギー性の病気(例えばぜんそくや鼻炎など)にかかるという「アトピックマーチ」が注目されていますが、この予防も赤ちゃんの頃からのスキンケアで予防できるのではないかと期待されています。
そしてもう1つ。子どもの皮膚トラブルで多いのが「とびひ」です。
とびひの原因は、黄色ブドウ球菌ですが、最近の研究ではその菌が産生する「表皮剥脱性毒素」がバリア機能の維持に大切な「デスモグレイン I」というたんぱく質を破壊することがわかってきました。
このように、子供の皮膚の病気は、バリア機能と密接に関わっているのです。

お子さんの肌を毎日すこやかに保つためには、まずは、皮膚のバリア機能とそのメカニズムをしっかりと理解し、日頃からのスキンケアを心がけていただければと思います。

会場Photo

松永先生は、ご自身も2人のお子さまがいらっしゃるというお母さま。皮膚の専門家としてはもちろん、ベテランママとしての目線から、子どものスキンケアについてお話してくださいました。
子どもの皮膚の特徴を知って、正しいケアを続けましょう。
「子どもの皮膚とスキンケア」
藤田保健衛生大学医学部皮膚科教授 松永佳世子先生
松永佳世子先生Photo 子どもの皮膚は大人に比べて薄く、乾燥しやすいのが特徴のひとつ。
理想的な肌に見えても、実はとても不安定なのです。ですから、子どもの頃は、刺激の少ないスキンケア用品を選んであげるように心がけたいものですね。
さらに、スキンケアのポイントを3つのキーワードに分けたこんなお話も。
スキンケアのポイントは3つ。1清潔にすること。2乾燥から守ること。3紫外線を防ぐこと。このポイントに従って、それぞれ刺激が少なく、肌質に合ったスキンケア法を見つけてあげることが大切です。
清潔にするためには、赤ちゃんは汗をかきやすいのでこまめに拭き取り、一日一回程度の洗浄で結構ですので刺激の少ない洗浄剤やシャンプー剤を選んでやさしく汚れを落としてあげてください。

松永佳世子先生Photo そして2番目のポイント。乾燥から守るためには、保湿効果が高いスキンケア用品で毎日保湿ケアをしてあげましょう。
皮膚のうるおいが保たれていれば、皮膚のバリア機能も保たれていて、外部刺激から体全体を守ることができます。
最後に3番目のポイント。紫外線から肌を守るためには、紫外線吸収剤が入っておらず、専用のクレンジング剤がなくても洗い流せるやさしい日焼け止めをマメに塗ることを心がけてください。
紫外線は、皮膚がんやシミ・シワの原因にもなりますので、子どもの頃からのまめな紫外線対策が大切です。
自分の子育ての経験からも言えることですが、「子どもだからこうするべき」というルールは特にありません。お父さん、お母さんが子供の肌と体調をしっかり観察して、その日の肌の状態に合わせた最適なスキンケアを毎日続けてあげることが大切なのではないでしょうか。

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はじめに 〜 日本臨床皮膚科医会からのご挨拶 〜
子どものスキンケアについて、先生方とのQ&A